「お金の話をするのは恥ずかしい」「恋人とお金のことを話すなんて野暮」そう思っているカップルは少なくありません。しかし、日本における離婚理由の不動の1位は「性格の不一致」ですが、これは「金銭感覚の不一致」と言っても過言ではないほど、お金の問題は関係に大きな影響を与えます。
実際のアンケート調査では、「金銭感覚が合わない」と感じるのは男性4割に対し、女性は7割という結果が出ており、すでに多くのカップル間で金銭感覚の違いが問題となっています。
本記事では、学校では教えてくれない「お金」について、カップルが知っておくべき基礎知識と実践的なアドバイスをご紹介します。
日本の金融教育の現状と問題点
世界に遅れをとる日本の金融教育
まず知っておきたいのは、日本の金融教育の現状です。金融教育を学校等で受けた人の割合は、米国が20%であるのに対し、日本はわずか7%と圧倒的に不足しています。
海外との比較データ:
- 金融知識に自信がある人:米国では71%、日本は12%
- 金融知識の正答率:英国60%、ドイツ68%、フランス67%に対し、日本は59%
なぜ日本はお金の話を避けるのか?
日本では、お金の話をするのは品のないこと、はしたないこととみなされ、長らくタブー視される傾向がありました。この文化的背景が、カップル間でのお金の話し合いを難しくしている一因となっています。
2022年から始まった高校での金融教育
2022年4月から、高校で金融教育が始まりました。成人年齢が18歳に引き下げられて、クレジットカードの保有、自動車保険の契約など金融に関する様々な契約が親の同意なしにできるようになり、若年期からの金融リテラシー向上の重要性が高まっています
カップル間で起こる金銭感覚の違い
金銭感覚のズレが生まれる瞬間
「高い・安い」の感覚が違うと、遊びに行く場所にも影響が出てくるもの。特に男性よりも女性のほうが金銭感覚を大事にしているようです
よくある金銭感覚のズレ:
- 価値観の相違
- 男性回答:服飾、趣味、ブランド物、エステ、ウーバーイーツ
- 女性回答:服飾、食事、家電、タクシー代、趣味、ギャンブル、タバコ、ゲーム代
- 支払い能力の差 旅行や家賃など、一緒に使うお金で払える金額が違うのは致命傷。「高いと思っているもの」に対し、「とりあえず買ってみれば」と言われると、金銭感覚が違うんだなと思う
- 節約に対する姿勢 「外食費をケチってほとんどしない」「外食をあまりしたがらない彼。自炊のが安いからという割に私に料理を作らせてくる」
お金の11の用途を理解しよう
人間は何かを得るためにお金を使うのですが、この何かを突き詰めると以下11個に分類することが可能です:
- 物質:物を集めることに使うお金(コレクション、ブランド品など)
- 快楽:楽をすること、気持ち良くなることに使うお金(趣味、娯楽など)
- 安心:健康と安心のために使うお金
- 住居:生活環境にかけるお金
- 時間:時間短縮にかけるお金
- 投資:自己研鑽や投資にかけるお金
- 交際:人間関係にかけるお金
- 名誉:見栄やプライドにかけるお金
- 経験:経験値にかけるお金
- 生存:生命維持に必要なお金
- 子ども:子どもに使うお金
物質用途と快楽用途は、金銭感覚が異なると非常に揉めやすい項目です。
カップルが話し合うべきお金のトピック
結婚前に話し合うべき基本項目
既婚男女234人に調査したところ、「結婚話が出る前、付き合っている段階から」が56.0%という結果に。過半数の人が、お金の話(金銭感覚の擦り合わせ)は恋人時代からしていることがわかっています。
話し合うべき基本項目:
- 収入と貯蓄の現状 収入が分かれば、新生活の家賃や生活費、どのくらい貯金するかなどの目安が見えてきます
- 将来のライフプラン
- 結婚式、新婚旅行の予算
- 子供の希望(何人、教育費)
- マイホーム購入の希望
- 老後の生活設計
- 家計管理の方法 家計管理の方法もいくつかありますが主なパターンは「妻管理・夫小遣い」「夫管理・妻生活費」「項目ごと分担」
具体的な話し合いの進め方
ステップ1:将来像の共有 まずしておきたいのが「二人が目指す未来像」のすり合わせ
- 家は購入派or賃貸派?
- 子供は希望するorしない?
- ずっとフルで働きたいor家事や育児に重点を置いて扶養範囲内で働きたい?
ステップ2:現状の把握 自分の出費を見直してみて、無駄使いしていないと思っていたのは、何にお金を使っているかを全く気にしていなかったのが理由だった
ステップ3:目標設定 買いたいものややりたいことなど将来の計画を立てたら、夫婦で目標の貯蓄額を決めましょう
家計管理の5つの方法
1. 一方管理・他方小遣い制
ふたりの収入を合算し、家計管理の得意な方がすべてを管理し、もう一方にお小遣いを渡す方法
メリット:
- 家計管理の得意な人がいれば貯まりやすい
- 無駄な支出をなくして効率的にお金を貯められる
デメリット:
- 管理する側に負担がかかる
- 公平感を保ちにくい
2. 生活費折半制
2人の財布を別々にして、生活費を折半する方法
メリット:
- 負担分を払った後に残ったお金は自由に使える
- どちらか一方に負担が偏らない
デメリット:
- 家計全体の収支がわかりにくい
- パートナーの収入・貯蓄がわからない
3. 費目別分担制
例えば通信費に強い人が通信費を担当し、節約のアイデアが浮かびやすくなります
4. 共同口座制
すべての収入を共同口座に集約し、そこから生活費と小遣いを配分する方法
5. ハイブリッド制
複数の方法を組み合わせた柔軟な管理方法
金銭感覚の違いを乗り越える方法
1. 相手の用途を理解する
金銭感覚をすり合わせていくためのコツ。大切なのは「相手が”どんな用途で”お金を使っているのか」を理解すること
2. 話し合いのルール
まずは我慢せずに伝えて、話し合うことが大事。変わるには、金銭感覚が違うことを自覚する必要があります
効果的な話し合い方:
- 「間をとる」「お互い歩み寄る」
- 相手の価値観に理解を示す
- 妥協点を探る
3. 定期的な見直し
収入は、昇給で増えたり、産休・育休で減ったりと変わることもあるので、年に1回は夫婦で話し合いを。タイミングとしては、年末年始がオススメ
カップルが身につけるべき金融リテラシー
基本的なお金の知識
1. 先取り貯蓄の重要性 収入から先に貯蓄分を取り分ける「先取り貯蓄」の考え方は、お金を確実に貯蓄していくための基本
2. 給与明細の理解 給与明細の見方も知っておきましょう。支給額からは所得税や住民税といった税金や雇用保険・健康保険・厚生年金保険といった社会保険料が控除されます
3. 投資の基礎知識
- リスクとリターンの関係
- 分散投資の重要性
- 長期投資の効果
実践的な家計管理スキル
1. 家計簿の活用 家計簿アプリを銀行口座やクレジットカードなどと紐づければ、預金残高や家計収支、支出明細などをスマホで手軽にチェックできます
2. 口座の管理 銀行口座の管理方法についても話しあっておきましょう。新しい家庭用に作る口座は基本的に家計管理用、貯蓄用の2つとするのがいいでしょう
3. クレジットカードの適切な使用 特にクレジットカード払いは、実際にお金を使った日と、クレジットカードの利用代金が引き落とされる日にズレが生じるため、多用すると口座の管理が難しくなります
お金の話を切り出すタイミングと方法
自然な切り出し方
結婚式、新婚旅行、子ども、マイホームといった将来の話をしながら、お金に対する価値観を探りましょう。「将来これがしたい、こうなりたい、そのために必要なお金は…」と、連想ゲームのようにお金の話にシフトしていきやすい
具体的な話題例
食費についての話し合い 「いつも夜ご飯ってどうしてる?」といった話題から聞いてみるのがおすすめ。外食と自炊の頻度によっても食費は変わるもの
買い物での価値観確認 スーパーで一緒に買い物をしてみると、同じ食材でも高級品・お買い得品など相手が何を選ぶかで見えてくることも
カップルが避けるべき金銭トラブル
よくあるトラブル事例
- 収入や貯蓄の隠し立て お互いの正確な収入や貯蓄額を知っている夫婦は少ない、というデータがあります
- 一方的な価値観の押し付け 「何にお金を使おうが自分の勝手」なのであれば、相手にも同じ姿勢であるべき
- 家計管理の丸投げ 相手任せにせず、家計について定期的に話し合うことが大切
トラブル回避のポイント
1. 透明性の確保 夫婦のお金トラブルを生む一番の要因は「不透明性」。いかに夫婦両方からお金の流れが見えるような仕組みを作れるかが、夫婦円満の要
2. 定期的なコミュニケーション 夫婦で家計管理を行ううえで一番大切なのは「お金について普段からコミュニケーションをとること」
3. 柔軟性の維持 お金の管理は大切ですが、完璧にやろうとすると長続きしません。ストレスが溜まり、パートナーと衝突する原因にもなります
将来を見据えた資産形成
ライフステージ別の資産形成
20代カップル:
- 基本的な家計管理の確立
- 緊急時資金の準備
- 投資の基礎学習
30代カップル:
- 結婚資金・住宅資金の準備
- 保険の見直し
- 本格的な資産形成の開始
40代以降:
- 子供の教育費準備
- 老後資金の本格的な積立
- 資産の多様化
投資を始める前に話し合うべきこと
- リスク許容度の確認
- 投資目標の設定
- 投資期間の決定
- 投資商品の選択基準
実践的なアドバイス
家計改善の具体的ステップ
ステップ1:現状把握
- 収支の詳細な記録
- 固定費・変動費の分析
- 無駄な支出の洗い出し
ステップ2:目標設定
- 短期・中期・長期の目標設定
- 具体的な金額と期限の決定
ステップ3:実行と見直し
- 月次・年次の振り返り
- 必要に応じた計画の修正
おすすめのツール・アプリ
家計管理アプリ:
- OsidOri(カップル・夫婦専用)
- Zaim(詳細分析機能)
- マネーフォワード ME(総合管理)
銀行アプリ:
- Wallet+(地方銀行系)
- 各メガバンクの公式アプリ
まとめ:幸せな関係を築くために
お金の話は決してロマンチックではありませんが、お金の話を通して、将来に対してどのような考え方を持っているのかも理解し合えるので、ふたりの幸せな生活を始めるきっかけにもなります。
カップルが覚えておきたいお金の基本ルール:
- 透明性を保つ – 隠し事はしない
- 相手を尊重する – 価値観の違いを認める
- 定期的に話し合う – コミュニケーションを怠らない
- 柔軟性を持つ – 完璧を求めすぎない
- 未来志向で考える – 共通の目標を持つ
お金に対する感覚や価値観をお互いに理解した上で結婚するのが理想的。そのためにも「まずは自分自身が経済的にも精神的にも自立していることが大前提」です。
学校では教えてくれないお金の知識ですが、カップルで学び、話し合い、実践していくことで、より豊かで安定した関係を築くことができるでしょう。お金の話を避けるのではなく、二人の未来を築く大切なコミュニケーションとして捉えることが、幸せな関係の第一歩なのです。
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