「うちの子はまだ歩けないのに、お友達の子はもう歩いている」 「同い年の子はもう字が書けるのに、うちの子は…」
子育てをしていると、ついつい他のお子さんと比較してしまい、焦りを感じることってありますよね。この気持ち、よく分かります。親として我が子の成長を願うのは当然のことです。
しかし、その「焦り」が実は子どもの可能性を狭めてしまっているかもしれません。
なぜ私たちは比較してしまうのか
人の本能的な心理
人は本質的に周りと比べたくなる生き物です。心理学ではこのような思いを【社会的比較】と呼び、人一般の心理として研究が行われています。
私たちが他の子と比較してしまうのは、「我が子の能力が社会でどれくらいなのかを知りたい」という自然な気持ちから来ています。決して悪いことではありません。
情報社会の影響
現代では、SNSや育児情報サイトで他の子の発達状況を簡単に知ることができます。我が子の成長具合が気になり、どれくらいの成長が標準なのか、とインターネットで検索してしまうことはよくありますよね。生後6カ月の子はどんなことができるのか、1歳6カ月になるとどれくらいおしゃべりできるのか…。子どもがどんな風に成長するのかを期待する半面、「あれ?うちの子はまだできていないな?」「あの子はもうできているのに、我が子の発達は遅れていると不安になることもあります。
比較による焦りが子どもに与える深刻な影響
1. 自己肯定感の低下
最も深刻な影響は、子どもの自己肯定感が下がってしまうことです。
兄弟・姉妹やお友達など、他人と比較して評価する行動も、子どもの自己肯定感を下げる要因となります。
子どもは、「親が自分をどう見ているのか」という判断基準から、自分自身の価値を決めていく傾向があると考えられています。例えば親に「あなたは〇〇ができない」と言われれば、子どもは「自分は〇〇ができない」という思いを強くし、「あなたは〇〇が上手だね」と言われれば、子どもは「自分は〇〇が上手にできる」という思いが強くなります。
自己肯定感が低い子どもの特徴:
- チャレンジしない傾向がある点です。失敗した自分を認めたくないという心理が働いて、物事に全力で取り組もうとしなかったり、本気を出さなかったりする行動が見られます。
- 例えば自己肯定感の低い子どもは、「自分にはできない」と感じることが多く、何事にもがんばるエネルギーが不足してしまう傾向があります。そのため、すぐに物事を諦めてしまったり、挑戦することをしなくなってしまうことで、ますます自己肯定感が低くなってしまいます。
2. 主体性の喪失
比較による焦りは、子どもの主体性も奪ってしまいます。
主体性とは自発的な意思に基づき動くこと。それは誰でも生まれつき持っているものです。しかし、成長していく中で周囲の大人に行動を制限されたり、命令されたりするたびに少しずつ主体性が奪われていきます。
親が焦って「早く○○しなさい」「どうして○○ちゃんみたいにできないの?」と言い続けると、子どもは自分で考えて行動する機会を失います。
主体性がない子どもたちは、自分らしい選択や個性を否定された経験が多い傾向にあります。素直な気持ちや感性を否定されると、自分らしさを発揮することに恐怖心や不安を抱いてしまいます。その結果、周りに合わせる選択が増えてしまうのです。
3. 創造性の制限
他の子と同じことができるようになることばかりを重視すると、子ども独自の創造性や個性が失われてしまいます。
「みんなと同じようにできること」が目標になってしまうと、子どもは新しいことに挑戦したり、自分なりの方法を見つけたりする意欲を失います。
4. プレッシャーと萎縮
専門家によると、親が成果ばかりを重視すると、子どもは自分の本質や価値は成果によって決まると考えるようになるそうです。
焦りの子育ては必ず失敗します。反対に、親が寛大な態度でいると、子どもは気楽になり、それまでできなかったことがウソのようにうまくできるようになります。
子どもの可能性を最大限に引き出すために
1. 比べるなら「過去の我が子」と
いろいろな子と比べ始めるとわが子の短所や不十分なところばかりが気になるものです。子どものよい部分に目を向けたり、比べるなら、以前のその子自身と比べて成長を確認してみましょう。
周りと比べず、少し前の自分と比べることで、子どもの着実な成長を実感できます。
2. プロセスを認める
結果ではなく、努力や挑戦したこと自体を認めてあげましょう。
子どものチャレンジしたことや頑張った内容がうまくいかなかった場合でも、結果だけをみて、ほめたり責めたりするようなことは避けましょう。重要なのは、子どもが自分からチャレンジしてみたいと思う気持ちや努力したプロセスなのです。
3. 無条件の愛情を伝える
子どもが何か失敗したりうまくできなかったりしたときには「大丈夫だよ。またやってみよう」「うまくいかなかったけど、とってもがんばっていたよ」と、声をかけてあげましょう。前向きな声かけで子どもは「失敗してもやり直せばいいんだ」と安心することができます。
4. 子どもの個性を受け入れる
子どもはひとりひとり異なる資質や特性を有しており、その成長には個人差がある一方、子どもの発達の道筋やその順序性において、共通して見られる特徴がある。
文部科学省も述べているように、子どもにはそれぞれ個人差があります。他の子と発達のペースが違うのは当然のことなのです。
子どもの自己肯定感を高める具体的な方法
日常での声かけ
- 「頑張ったね」「挑戦したね」と過程を認める
- 褒めるときには子どもの能力や結果だけを褒めるのではなく、子どもの人格を尊重し、がんばったところを具体的に褒めてあげると良いでしょう。
- 「どうしたの?」は、大人の期待にそぐわない行動を子どもがとったとき、頭ごなしに叱るのではなく、第一声を「どうしたの?」に変え、行動の背景にあるその子なりの事情を聞き出す姿勢を見せることです。
環境づくり
- 子どもが自分で選択できる機会を増やす
- 失敗を恐れずに挑戦できる安心できる環境を作る
- やりたいと本人が言ったもの(たとえば料理や、野菜の栽培など)はできるだけ行えるようにしたところ、できることが増えたり、達成感を得られたりして子どもが満足していました。
まとめ:子どもの可能性は無限大
他の子と比較して焦ってしまう気持ちは、親として自然なものです。しかし、その焦りが子どもの可能性を狭めてしまわないよう、意識を変えることが大切です。
何はともあれ子どもたちがいまここに、元気に生きていることに感謝しつつ、「我が子は我が子、ありのままで素晴らしい存在」であることを忘れないでいたいですね。
子どもの発達には個人差があり、それぞれに素晴らしい個性と可能性があります。比較ではなく、その子らしさを大切にして、長い目で成長を見守ることが、子どもの可能性を最大限に引き出す鍵となるでしょう。
今日から始められること:
- 他の子と比較する言葉を控える
- 子どもの小さな成長や努力を認める
- 「あなたはあなたのままで素晴らしい」と伝える
- 子どもの興味や関心を大切にする
- 失敗を学びの機会として捉える
子育ては長い旅路です。焦らず、子どもと一緒に成長していく気持ちで歩んでいきましょう。
コメント