毎年夏から秋にかけて日本を襲う台風は、年々大型化・強力化しており、甚大な被害をもたらすことが増えています。「昨年は大丈夫だったから今年も」という考えは非常に危険です。
近年の台風では、長期間の停電、断水、道路の寸断により、数日から数週間にわたって孤立状態になる地域も発生しています。こうした状況を乗り切るためには、事前の十分な準備が欠かせません。
この記事では、台風に備えて準備しておくべきものを、優先度別・カテゴリー別に詳しくご紹介します。いざという時に家族を守るため、今からしっかりと準備を整えましょう。
台風による被害の現状
台風対策の重要性を理解するため、まず近年の台風被害について確認しましょう。
近年の主な台風被害
令和元年房総半島台風(2019年):
- 最大風速57.5m/s
- 停電戸数:最大約93万戸(復旧まで最長2週間)
- 断水戸数:最大約14万戸
- 住家被害:全壊・半壊約7,000棟
令和元年東日本台風(2019年):
- 河川の氾濫:71河川140カ所
- 停電戸数:最大約52万戸
- 死者・行方不明者:104名
- 住家被害:全壊・半壊約30,000棟
台風で起こりうる被害
一次被害(台風の直接的影響):
- 強風による建物損壊・倒木
- 大雨による河川氾濫・土砂災害
- 高潮による浸水被害
- 竜巻の発生
二次被害(インフラへの影響):
- 停電(数日〜数週間)
- 断水・下水道停止
- ガス供給停止
- 通信障害
- 交通機関の運休
- 商店・コンビニの営業停止
優先度別準備リスト
【最優先】生命を守るための必需品
1. 水(1人1日3リットル×最低3日分)
人間が生命を維持するために最も重要なのが水です。
必要量の計算:
- 飲料水:1人1日2リットル
- 生活用水:1人1日1リットル
- 4人家族の場合:3リットル×4人×7日分=84リットル
保存方法:
- ペットボトル(2リットル×42本)
- ウォータータンク(20リットル×4個)
- 簡易給水袋(緊急時用)
水の備蓄のコツ:
- 賞味期限をチェックしてローテーション
- 冷暗所での保管
- 災害用長期保存水(5年保存)の活用
2. 非常食(最低3日分、推奨1週間分)
主食:
- アルファ米(お湯や水で戻せるご飯)
- パンの缶詰(3年保存可能)
- 乾麺(そうめん、パスタ)
- カップ麺・インスタント麺
おかず:
- 缶詰(魚、肉、野菜)
- レトルト食品(カレー、パスタソース)
- 味噌汁・スープの素
- 栄養補助食品(カロリーメイトなど)
その他:
- 乾パン・クラッカー
- ナッツ・ドライフルーツ
- チョコレート・あめ
- 調味料(塩、砂糖、醤油)
非常食選びのポイント:
- 火を使わずに食べられるもの
- 常温で長期保存可能
- 栄養バランスを考慮
- 家族の好みに合わせる
3. 照明器具
停電時の照明確保は安全のために不可欠です。
必須の照明器具:
- 懐中電灯(LED式、1人1台)
- ランタン(部屋全体を照らす用)
- ヘッドライト(両手が使える)
- ろうそく・ライター(最終手段)
選び方のポイント:
- 電池式とソーラー式の併用
- 防水・防塵機能付き
- 長時間点灯可能なもの
- USB充電機能があるとより便利
4. 電池・モバイルバッテリー
必要な電池:
- 単1、単2、単3、単4電池
- 各サイズ10本以上の備蓄推奨
- リチウム電池(長期保存に適している)
モバイルバッテリー:
- 大容量タイプ(20,000mAh以上)
- ソーラー充電式
- 手回し発電式
【重要】生活を支えるもの
5. ラジオ・情報収集手段
災害時の情報収集は生死を分ける重要な要素です。
推奨ラジオの種類:
- 手回し発電ラジオ
- 乾電池式ラジオ
- ソーラー充電式ラジオ
- ワイドFM対応ラジオ
その他の情報収集手段:
- スマートフォン(充電器必須)
- タブレット端末
- 電池式テレビ
6. 医薬品・救急用品
基本的な医薬品:
- 処方薬(1週間分以上)
- 解熱剤・痛み止め
- 胃腸薬・整腸剤
- 外用薬(軟膏、湿布)
- 目薬・うがい薬
救急用品:
- 絆創膏・ガーゼ
- 包帯・三角巾
- 消毒液・アルコール
- 体温計
- 使い捨て手袋
7. 衛生用品
基本的な衛生用品:
- トイレットペーパー(芯なしタイプ)
- ティッシュペーパー
- ウェットティッシュ
- 手指消毒液
- 石鹸・シャンプー
生理用品・赤ちゃん用品:
- 生理用ナプキン
- おむつ(大人用・子ども用)
- 粉ミルク・哺乳瓶
8. 調理・食事用具
調理器具:
- カセットコンロ・ガスボンベ
- 鍋・フライパン(軽量アルミ製)
- 包丁・まな板
- 缶切り・栓抜き
食事用具:
- 使い捨て食器・カップ
- 割り箸・スプーン・フォーク
- アルミホイル・ラップ
- ジッパー付き保存袋
【あると便利】快適性を高めるもの
9. 寝具・防寒具
寝具:
- 毛布・タオルケット
- 寝袋・エアーマット
- 枕・クッション
- レジャーシート
防寒具:
- 厚手の衣類
- 雨具・レインコート
- 軍手・手袋
- 帽子・マフラー
10. 生活用品
日用品:
- タオル(大小各種)
- 洗剤(食器用・洗濯用)
- ゴミ袋(大型・厚手)
- ダンボール箱
- ガムテープ・ビニールテープ
工具類:
- ドライバー・ペンチ
- のこぎり・ハンマー
- ロープ・ひも
- ブルーシート
11. 現金・貴重品
災害時はATMや電子決済が使用できなくなる可能性があります。
準備すべき現金:
- 小銭を中心に10万円程度
- 10円玉・100円玉を多めに(公衆電話用)
重要書類:
- 身分証明書のコピー
- 保険証のコピー
- 通帳・印鑑
- 家族の写真(はぐれた時の確認用)
家族構成別準備のポイント
乳幼児がいる家庭
特別に必要なもの:
- 粉ミルク(1週間分以上)
- 哺乳瓶・消毒グッズ
- 離乳食・ベビーフード
- おむつ(多めに備蓄)
- おしりふき・ベビーローション
- 着替え(成長を考慮して大きめも)
- おもちゃ・絵本(不安軽減用)
注意点:
- 粉ミルクは水が必要なので水の備蓄を増やす
- アレルギー対応食品の確保
- 子どもの成長に合わせた定期的な見直し
高齢者がいる家庭
特別に必要なもの:
- 処方薬(多めに備蓄)
- お薬手帳のコピー
- 紙おむつ・尿取りパッド
- 介護食・やわらか食
- 補聴器の電池
- 老眼鏡(予備)
- 杖・歩行器
注意点:
- 薬の管理を確実に行う
- 避難時の移動手段を事前検討
- かかりつけ医との連絡方法確認
ペットがいる家庭
ペット用の準備:
- ペットフード(1週間分以上)
- 水・食器
- ケージ・キャリーバッグ
- 首輪・リード(予備も)
- ペットシート・砂
- 薬・ワクチン証明書
- ペットの写真(迷子対策)
備蓄品の管理方法
ローリングストック法
基本の考え方: 日常的に備蓄品を消費し、消費した分を新たに購入して備蓄する方法です。
メリット:
- 賞味期限切れを防げる
- 災害時でも食べ慣れたものを食べられる
- 特別な保管場所が不要
- 無駄がない
実践方法:
- 多めに購入(いつもの2-3倍)
- 古いものから消費
- 消費した分を補充
- 常に一定量をキープ
保管場所の分散
リスク分散の考え方: 一箇所に集中保管すると、その場所が被災した場合に全て失う可能性があります。
推奨保管場所:
- 1階: 重い水・缶詰類
- 2階: 軽い乾物・衣類
- 車内: 緊急避難用セット
- 物置: 工具・燃料類
定期的なチェック
チェック項目:
- 賞味期限・使用期限
- 機器の動作確認
- 電池の残量
- 薬の種類・量
チェック頻度:
- 月1回:賞味期限の確認
- 季節の変わり目:衣類の入れ替え
- 年2回:機器の動作確認
台風接近時の最終準備
台風情報の確認
確認すべき情報:
- 台風の進路・勢力
- 上陸予想時刻
- 警報・注意報の発表状況
- 避難勧告・指示の有無
情報収集源:
- 気象庁ホームページ
- 自治体の防災情報
- NHKニュース・データ放送
- 防災アプリ
家の外の安全対策
飛散防止対策:
- 植木鉢・物干し竿の屋内取り込み
- 自転車・バイクの固定
- 看板・屋外設備の点検・固定
- 雨戸・シャッターの設置
排水対策:
- 側溝・排水口の清掃
- 土のう・水のうの準備
- 浸水想定箇所の確認
家の中の安全対策
窓ガラス対策:
- 飛散防止フィルムの貼付
- 段ボール・ガムテープでの補強
- カーテン・ブラインドを閉める
家具の固定:
- 転倒防止器具の確認
- 重いものを下段に移動
- 割れ物の安全な場所への移動
避難準備
避難のタイミング
避難勧告・指示の段階:
- 避難準備情報: 避難に時間がかかる人は避難開始
- 避難勧告: 速やかに避難場所へ避難
- 避難指示: 直ちに避難(外出危険な場合は屋内安全確保)
自主避難の判断基準:
- ハザードマップでの危険地域居住
- 築年数の古い建物
- 1階居住で浸水の可能性
- 単身高齢者・要援護者
避難用持ち出し袋
1次持ち出し袋(すぐに避難する時):
- 貴重品(現金・身分証明書)
- 薬・お薬手帳
- 懐中電灯・ラジオ
- 食料・水(1日分)
- 着替え・雨具
- タオル・ティッシュ
2次持ち出し袋(避難生活が長期化する時):
- 食料・水(3日分)
- 調理器具・食器
- 寝具・防寒具
- 衛生用品
- 工具類
避難時の注意点
避難のタイミング:
- 明るいうちに避難完了
- 風雨が強くなる前に行動
- 冠水道路は絶対に通らない
避難時の装備:
- 動きやすい服装・靴
- ヘルメット・帽子
- 雨具(上下セパレート)
- 反射材・笛
停電対策
長期停電への備え
照明の確保:
- LED懐中電灯(電池寿命が長い)
- ランタン(広範囲照明)
- ろうそく(換気に注意)
通信手段の確保:
- スマートフォンの節電設定
- 大容量モバイルバッテリー
- 車での充電(エンジンかけて)
- 手回し・ソーラー充電器
食品保存対策:
- 冷蔵庫・冷凍庫の開閉を最小限に
- 保冷剤・氷の活用
- 常温保存可能食品への切り替え
熱中症対策
停電でエアコンが使えない状況での熱中症対策は重要です。
冷却グッズ:
- 保冷剤・氷枕
- 冷却タオル
- うちわ・扇子
- 体を冷やすスプレー
暑さ対策:
- 日中は日陰で過ごす
- 水分・塩分補給
- 濡れタオルで体を拭く
- 風通しの良い場所で休息
台風通過後の注意点
安全確認
外出前の確認:
- 建物の損傷がないか
- 電線の垂れ下がりがないか
- 道路の冠水・がけ崩れがないか
- ガス・水道・電気の復旧状況
二次災害の防止:
- 屋根・壁の損傷確認
- 片付け作業での怪我防止
- 感電・ガス漏れへの注意
- 写真撮影(保険請求用)
復旧作業
優先順位:
- 安全確保(応急修理)
- ライフライン復旧確認
- 食料・水の確保
- 片付け・清掃作業
業者への連絡:
- 電気・ガス・水道会社
- 修理業者(信頼できる業者を事前確認)
- 保険会社への被害報告
まとめ
台風による被害を最小限に抑えるためには、平時からの十分な準備が不可欠です。近年の台風は予想を超える勢力で襲来することが多く、「今まで大丈夫だったから」という考えは通用しません。
台風対策の重要ポイント:
- 備蓄の充実: 最低3日分、推奨1週間分の備蓄
- 情報収集: 複数の手段で正確な情報を得る
- 早めの判断: 避難勧告を待たずに自主的な避難も検討
- 家族での共有: 家族全員が準備内容と避難計画を理解
- 定期的な見直し: 備蓄品の管理と計画の更新
台風対策は「備えあれば憂いなし」の典型例です。被害が発生してから後悔しても遅いのです。この記事を参考に、今すぐ台風対策の準備を始めてください。
あなたと家族の安全を守るため、そして地域コミュニティの一員として、しっかりとした準備を整えることが重要です。台風シーズンが本格化する前に、必要な備蓄品を揃え、家族で避難計画を話し合い、いざという時に迅速に行動できる体制を整えましょう。
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