きょうだい喧嘩は親の仲裁テクニック次第で劇的に減らすことができます。保育士が実践する4つのポイント:①すぐに止めない ②双方の気持ちを聞く ③解決策を子ども自身に考えさせる ④事後フォローを忘れない を実践することで、効果的な仲裁が可能になります。
「また始まった…」
きょうだい喧嘩の声が聞こえるたびに、親としてはため息をついてしまいますよね。「いい加減にしなさい!」「なんで仲良くできないの!?」と言いたくなる気持ち、とてもよく分かります。
でも実は、子どもの喧嘩は仲裁の仕方によって、その後の喧嘩の回数が大きく変わってくることをご存知でしょうか?
この記事では、保育のプロが実践している効果的な仲裁テクニックと、年齢別の対処法をご紹介します。
なぜきょうだい喧嘩が起こるのか?発達段階別の理解
幼児期(2~6歳):自己中心性の時期
心理学者のピアジェによれば、2歳から7歳ごろの子どもの考え方には、「自己中心性」が大きな特徴としてあるそうです。これは、決してわがままという意味ではなく、自分を中心として周囲のことを認識する、文字通り「自己」を「中心」においた考え方をすることです
この時期の特徴:
- 自分が思っていることは相手も同じように思っている
- 相手が言っていることは関係ない。自分が言いたいことを一方的にしゃべる
- 自分の欲求を優先したい気持ちが強い
小学生期(6~12歳):社会性発達の時期
小学生になると、親の目の前でケンカが繰り広げられる機会はぐっと減ります。しかし、学校という新しい社会での経験が家庭内の関係にも影響を与えます。
この時期の特徴:
- 自分の気持ちを言葉で表現できるようになる
- 相手の立場を理解し始める
- ルールや公平性への意識が高まる
中高生期(12歳~):アイデンティティ確立の時期
思春期に入ると、きょうだい喧嘩の質も変化します。
この時期の特徴:
- プライバシーへの意識が高まる
- 個性の主張が強くなる
- 親への反発心も含んだ複雑な関係性
保育士が実践する4つの仲裁ポイント
子ども同士の喧嘩を仲裁する際に、気をつけていただきたいポイントは全部で4つです
ポイント1:すぐには止めない(安全確認後)
もちろん、ケガの可能性があるような激しい喧嘩は別ですが、大人が早急に仲介にはいるのは、避けた方が良いでしょう
理由:
- 子供は喧嘩から様々なことを学ぶ
- 相手の気持ちを考えられるようになる
- 思い通りにならないことがあることを知る
- 解決に向けて譲り合う気持ちも育つ
ただし、すぐに止めるべき場合:
- 噛みつく、ひっかく、叩くなど、相手がケガをする可能性がある場合
- どちらかが一方的に喧嘩をふっかけている場合
- 複数の子供が、1人の子供に攻撃している場合
ポイント2:双方の気持ちを平等に聞く
子供を叱る場合と同じく、仲裁に入る場合も、子供たちの気持ちを十分に聞いてあげましょう。どちらか一方に話を聞くのではなく、双方に平等にきちんと聞くことが最も大切です
効果的な声かけ例:
❌ NG例:
- 「どうして○○してしまったの?」 → 子供は責められている気持ちになってしまいます
✅ OK例:
- 「痛かったね」「悔しかったね」
- 「どんな気持ちだった?」
- 「何があったのか教えて」
ポイント:
- 答えを急かさない
- まずは気持ちに共感する
- 喧嘩に至った状況を見ている子供たちにも声をかける
ポイント3:解決策を子ども自身に考えさせる
きょうだい喧嘩を仲裁するコツは、子ども同士で解決できるように大人が手伝うことです
具体的な進め方:
- 状況整理: 「何が起こったのか」を整理する
- 気持ちの確認: それぞれの気持ちを聞く
- 解決策の提案: 「どうしたらいいと思う?」と子どもに問いかける
- ルール作り: 今後同じことが起きないためのルールを一緒に決める
重要なルール作りのポイント:
- 親は提案するだけでルールは子どもたちに決めてもらうこと
- 罰が厳しくなりすぎないこと
ポイント4:事後フォローを忘れない
例えば、お兄ちゃんが我慢したことで喧嘩が解決したのであれば、『よく我慢したね。ママちゃんと見てたよ』と声がけをする。そのときには、こっそりお菓子をあげてもいいでしょう
フォローの効果:
- 喧嘩では嫌な思いをしたけれど、ちゃんとママは自分の味方をしてくれていると感じられる
- 親への信頼度も増す
- 次回同じような状況での行動指針となる
年齢別・具体的な仲裁テクニック
幼児期(2~6歳)の仲裁法
特徴: 言葉での表現が未熟、感情のコントロールが難しい
効果的なアプローチ:
- まず安全確保
- 物理的な攻撃は即座に止める
- 「痛いのは嫌だよね」と共感
- 気持ちの代弁
- 「○○ちゃんは悲しかったんだね」
- 「△△くんも怒ったんだね」
- 具体的な解決策提示
- 「順番で使おうか」
- 「タイマーで時間を決めよう」
仲裁例:
おもちゃの取り合いの場合
親:「あ、二人ともそのおもちゃで遊びたかったんだね」
親:「○○ちゃんは貸してもらえなくて悲しかった?」
親:「△△くんは途中で取られて嫌だった?」
親:「じゃあ、どうしたらいいかな?」
子:「順番で!」
親:「いいアイデアだね。誰から?」
小学生期(6~12歳)の仲裁法
特徴: 論理的思考が発達、ルールへの理解が深まる
効果的なアプローチ:
- 事実確認を丁寧に
- 「何が起こったか順番に教えて」
- 「どんな気持ちになった?」
- 問題解決思考を促す
- 「どうしたら解決できると思う?」
- 「次は同じことが起きないようにするには?」
- 公平性を重視
- 「みんなが納得できる方法は?」
- 「フェアだと思う?」
仲裁例:
宿題スペースの取り合いの場合
親:「どちらも勉強したかったのに、場所で困ったんだね」
親:「お兄ちゃんの言い分を聞かせて」
親:「妹ちゃんの気持ちも教えて」
親:「二人とも勉強したい気持ちは同じだね。どうしたらいい?」
子:「時間で分ける」「場所を分ける」
親:「どちらがいいかな?」
中高生期(12歳~)の仲裁法
特徴: 自立心が強い、プライバシーを重視
効果的なアプローチ:
- 尊重的態度
- 「話を聞かせてもらえる?」
- 個別に話を聞く機会も作る
- 自主的解決を促す
- 「どう解決したい?」
- 「親としてできることはある?」
- 長期的視点での関係性重視
- 「きょうだいって大切な存在だよね」
- 「将来も続く関係だから」
介入すべき?見守るべき?判断基準
「介入OK!」の専門家見解
『きょうだい喧嘩に親が介入しない方がいい』『勉強として子供同士放っておけばいい』という人がよくいますが、正直に言って喧嘩から逃げる自分への正当化の言葉ではないかなと感じることがあります
私は『きょうだい喧嘩には親が介入OK!』と考えていますので、できるだけ親御さんにきょうだい喧嘩に関わってほしいと思います
ただし条件があります: それは『あくまで第三者の立場から関わる』ということです。親は仲裁者でもなければ、裁判官でもないことを頭に入れておくことが大事です
見守るべき場合の判断基準
見守りが適切な場合:
- 子どもが泣かずに一生懸命自分の考えを伝えている場合
- 物理的な危険がない言葉でのやりとり
- 子ども同士で解決しようとする姿勢が見える
即座に介入すべき場合:
- 身体的な攻撃がある
- 一方的ないじめの様相
- 感情が高ぶりすぎて収拾がつかない
きょうだい喧嘩を予防する日常のコツ
予防法1:普段から相手の良いところを伝える
喧嘩がよく起こるきょうだいは、相手に対して日常のストレスが蓄積していることも原因のひとつです。つまり、普段から相手の印象が悪いといえます
具体的な方法:
- 子供と一対一になったときなどに、『妹のどんなところが好き?』などと、何気なくきょうだいの良いところを聞いておく
- 『お兄ちゃんが、○○のことかわいいって言ってたよ』などと、それを今度は相手がいないところでさり気なく伝えておく
予防法2:きょうだいどちらもが満足できるフォロー
また、お菓子を配るとき、後になった子に対して『大きい方を残しておいたよ』と伝えたりすることは、たとえ本当でなくても有効な声がけです
例:三輪車の取り合いの場合
- お姉ちゃんが強引に先に乗った場合
- 妹の番がきたとき、親が後ろから押してあげる
- 少し長めに走らせてあげる → 先に取られたことが何でもないことのようになる
予防法3:「どちらの味方もする」スタンス
第三者の立場という意味では、『きょうだいどちらの味方もする』というスタンスを貫くことがおすすめです。一般的に、『どちらの味方もしない』という対処法に陥りがちですが、これではますますこじれます
NG対応:やってはいけない仲裁法
❌ 即座に止める
「もう、喧嘩はダメ!」と頭ごなしに止めてしまうと、子どもたちは何も学べません。
❌ 一方的に叱る
年上だから、力が強いからという理由だけで一方を悪者にしてしまうのは避けましょう。
❌ 親の都合を優先
親同士の人間関係を優先し、『ごめんね』『いいよ』の言葉だけを子どもに強要し、『シャンシャン、めでたしめでたし』としないことが大事
❌ 感情的になる
親自身がイライラしていると、適切な仲裁ができません。まず親が冷静になることが重要です。
喧嘩から学ぶ子どもの成長
喧嘩がもたらすポジティブな効果
子どもたちはさまざまな出来事を経験して大きくなりますが、友だちとのケンカも成長に欠かせない学びの1つです
子どもたちが学ぶこと:
- 「イヤだ」という気持ちを表現する、言葉で伝える
- 友だちの気持ちや思いに気づく、知る、理解する
- 自分の思いだけでは友だちとうまく遊べないことを知る
長期的な視点の重要性
子ども同士のケンカは大人が考えるほど長く引きずらず、次の日にはケロッとしていることも。まず数日は様子を見てあげてください
年齢別チェックリスト
幼児期(2~6歳)チェックポイント
- ✅ 物理的な安全を最優先している
- ✅ 気持ちの代弁をしている
- ✅ 具体的で分かりやすい解決策を提示している
- ✅ 褒めるポイントを見つけている
小学生期(6~12歳)チェックポイント
- ✅ 事実確認を丁寧に行っている
- ✅ 子ども自身に解決策を考えさせている
- ✅ 公平性を重視している
- ✅ ルール作りに参加させている
中高生期(12歳~)チェックポイント
- ✅ 尊重的な態度で接している
- ✅ プライバシーに配慮している
- ✅ 自主的解決を促している
- ✅ 長期的な関係性を重視している
専門家からのアドバイス
教育現場での仲裁テクニック
最後に殴っちゃったんだね。……分かった。それは、悪かったぞ。でも、いったんそこは置いておこう。そもそも、このケンカが起きた原因は何だったの?
思わず殴っちゃったんだね。気持ちは分かるよ
ポイント:
- 「(あなたがそうなってしまった)気持ちは、分かるよ」と伝える
- 興奮して我を忘れている子供は落ち着きを取り戻し始める
- 初動で考えるべきことは、「いかに子供たちの気持ちを落ち着かせて、話し合いができる状態にしていくか」
仲裁における重要な心構え
仲裁役である大人が、ジャッジをしないことが大切です。大人は「巻き戻し」の中で語られている「子供たちの物語」に集中し、それを理解することに努めます
単に、どんどん子どもに話を聞いて、その内容を整理していけばいいだけです。話が止まってしまったら、具体的に「ここは、どうなの?」と聞きましょう。子供は答えてくれます
まとめ:効果的な仲裁の5つの原則
1. 安全確保が最優先
物理的な危険がある場合は即座に介入し、まず安全を確保する。
2. 「第三者」として関わる
裁判官ではなく、子どもたちが自分で解決できるようサポートする立場に徹する。
3. 双方の気持ちを平等に聞く
どちらか一方だけでなく、必ず両方の言い分と気持ちを聞く。
4. 解決策は子ども自身に考えさせる
大人が答えを出すのではなく、子どもたちに考える機会を提供する。
5. 事後フォローを忘れない
喧嘩が終わった後も、それぞれの頑張りを認め、次につながる声かけをする。
最後に:きょうだい喧嘩は成長のチャンス
きょうだい喧嘩は確かに親にとってストレスの原因になりがちですが、適切な仲裁をすることで子どもたちの大きな成長につながります。
重要なのは、喧嘩を「悪いもの」として即座に止めるのではなく、「学びの機会」として捉え、子どもたちが自分で問題解決できるようサポートすることです。
きょうだいのどちらもが満足できるような声がけやフォローを常に意識することで、きょうだい喧嘩がぐっと減ると思いますよ
今日からでも実践できるテクニックばかりですので、ぜひ次回のきょうだい喧嘩の際に試してみてください。きっと子どもたちの成長を実感できるはずです。
この記事で紹介したテクニックが、平和で楽しい家庭環境づくりのお役に立てれば幸いです。子どもたちがお互いを思いやり、協力し合えるきょうだい関係を築けるよう、親として適切なサポートを続けていきましょう。
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