「大学に行くか、高校卒業後に就職するか」—この選択が将来の収入にどれほど影響するかご存知でしょうか?今回は、厚生労働省などの公的データをもとに、高卒と大卒の生涯年収格差の実態と、変化する労働市場でのこれからの働き方について詳しく解説します。
要点まとめ
- 男性:大卒と高卒で約5,000万円の生涯年収差
- 女性:大卒と高卒で約6,000万円の生涯年収差
- 初任給差:約4~5万円だが、年齢とともに格差拡大
- しかし、IT業界など「学歴不問・スキル重視」の分野が拡大中
- 高卒でも適切な戦略で年収アップは十分可能
高卒と大卒の生涯年収格差:リアルな数字
生涯年収の差額
独立行政法人労働政策研究・研修機構の「ユースフル労働統計2023」によると、学校卒業後にフルタイムの正社員として60歳まで働いた場合の生涯年収は以下の通りです。
【男性の生涯年収】
- 高校卒:約2億1,000万円
- 大学・大学院卒:約2億6,000万円
- 差額:約5,000万円
【女性の生涯年収】
- 高校卒:約1億5,000万円
- 大学・大学院卒:約2億1,000万円
- 差額:約6,000万円
この数字を見ると、特に女性の場合、学歴による生涯年収の差がより大きいことが分かります。
年代別の年収推移
年収の差は最初から大きいわけではありません。20代前半では高卒の方が4年早く働き始めるため、むしろ年収が高い場合もあります。
【年代別年収の変化】
- 20~24歳:高卒が先行(4年早くスタートのため)
- 25~29歳:年収差約30~40万円
- 30~34歳:年収差約60~80万円
- 40~44歳:年収差約100万円以上
- 50~54歳:年収差約150~200万円
つまり、20代後半で大卒が逆転し、その後は年齢とともに格差が拡大していくのが現実です。
初任給の差
厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査」によると:
- 高卒初任給:約17万2,000円
- 大卒初任給:約21万3,000円
- 差額:約4万1,000円
この初任給の差が、昇給カーブの違いと相まって、生涯年収の大きな格差につながっていきます。
なぜ学歴で年収に差が生まれるのか?
1. 就職できる企業・職種の違い
大卒の場合
- 大手企業の総合職採用への応募が可能
- 専門職(医師、弁護士、研究職など)への道が開かれている
- 管理職候補としての採用が多い
高卒の場合
- 技術職、製造業、建設業などが中心
- 現場レベルからのスタートが多い
- 一部企業では応募資格が「大卒以上」に限定
2. 昇進・昇格の速度差
多くの日本企業では、依然として学歴が昇進に影響を与えています。大卒者の方が:
- 管理職への昇格が早い
- 幹部候補として育成される機会が多い
- 転職時もより良いポジションにつきやすい
3. 退職金の差
学歴は退職金にも影響します:
- 大企業:高卒と大卒で約2,000万円の差
- 中小企業:約600万円の差
しかし、時代は変わりつつある:「学歴不問」の潮流
IT業界での変化
IT業界では特に「学歴よりスキル」の傾向が強まっています:
- 未経験可・学歴不問の求人が増加
- 実務経験を重視する採用が主流
- 高卒でも年収1,000万円超えのエンジニアが存在
- プログラミングスキルがあれば初任給の差は1~2万円程度
企業の採用トレンド変化
2025年の採用市場では:
- スキル・経験重視の採用が拡大
- 学歴フィルターを撤廃する企業が増加
- リモートワークの普及で地方在住者にもチャンス拡大
- 人材不足により間口を広げる企業が増加
高卒で年収アップを実現する戦略
1. 成長業界・職種を狙う
おすすめ業界(高卒でも高収入が期待できる)
- IT・プログラミング
- 平均年収:400~800万円(経験により1,000万円超も)
- 未経験からでも転職可能
- 在宅勤務が可能
- 金融・保険
- 平均年収:350~600万円
- インセンティブで大幅収入アップ可能
- 営業職なら学歴不問の場合が多い
- 建設・インフラ
- 平均年収:300~500万円
- 資格取得で収入大幅アップ
- 人手不足で需要高
2. 資格・スキル取得で差別化
高卒におすすめの資格
- ITパスポート・基本情報技術者
- 簿記2級・1級
- 宅地建物取引士
- 電気工事士
- 危険物取扱者
3. 転職を戦略的に活用
- 同じ会社に長くいるより、3~5年で転職を繰り返す方が年収アップしやすい
- 転職時には実績・スキルをしっかりアピール
- 転職エージェントを活用して学歴不問の優良企業を見つける
これからの働き方:学歴の価値が変わる時代
2025年以降の労働市場予測
- DX人材の不足
- 2030年には約79万人のIT人材が不足予定
- プログラミングスキルがあれば学歴関係なく高待遇
- リモートワークの定着
- 地方在住でも都市部企業で働ける
- 成果主義が浸透し、学歴より実績重視
- 起業・副業の一般化
- 個人のスキルで稼ぐ時代
- 学歴よりも「何ができるか」が重要
企業側の変化
- 学歴フィルター撤廃の動きが加速
- **多様性(ダイバーシティ)**重視の採用
- 実務経験・ポテンシャルを評価する採用手法の普及
まとめ:学歴格差はあるが、戦略次第で逆転可能
現実を受け入れつつ、行動する
確かに統計上、高卒と大卒には生涯年収で約5,000~6,000万円の差があります。しかし、これは「平均値」であり、個人の努力や戦略によって大きく変わります。
成功のための3つのポイント
- 成長業界でスキルを磨く
- 資格取得で専門性を高める
- 戦略的な転職でキャリアアップ
最後に
学歴は確かに一つの要素ですが、それがすべてではありません。特にこれからの時代は、**「何を学んだか」より「何ができるか」**が重視される時代です。
高卒だからといって諦める必要はありません。適切な戦略と継続的な学習によって、大卒以上の年収を実現している人は数多く存在します。
重要なのは、現実を正しく理解した上で、自分なりの戦略を立てて行動することです。あなたの努力次第で、統計の数字を覆すことは十分可能なのです。
参考資料
- 独立行政法人労働政策研究・研修機構「ユースフル労働統計2023」
- 厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査」
- 経済産業省「IT人材需給に関する調査」
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