はじめに
「うちの子、もっと自信を持ってくれたら…」「何事にも前向きに取り組んでほしい」そんな願いを持つ親御さんは多いのではないでしょうか。実は、子どもの自己肯定感は親の「たった一言」で大きく変わることが、最新の研究で明らかになっています。
文部科学省も推奨する自己肯定感向上の取り組み。本記事では、教育専門家が実証した「魔法の言葉」10選をご紹介します。これらの言葉を日常的に使うことで、お子さんの心に劇的な変化が生まれるでしょう。
自己肯定感とは?なぜ重要なのか
自己肯定感の定義
自己肯定感とは、その言葉の通り「ありのままの自分を肯定できる感覚」のことです。いい面も悪い面も含めて自分自身に満足し、自分自身に価値があると認め、自分のことを大切な存在だと思える感覚です。
自己肯定感が高い子どもの特徴
- 新しいことにも積極的に挑戦する
- 失敗を恐れずチャレンジできる
- 困難に直面しても立ち直りが早い
- 他人と比較せず自分のペースで成長できる
- コミュニケーション能力が高い
日本の子どもの現状
日本の子どもたちの自己肯定感は諸外国に比べて低い傾向にあることが調査で明らかになっています。だからこそ、家庭での声かけが重要になってくるのです。
避けるべき「呪いの言葉」3選
魔法の言葉をご紹介する前に、まずは絶対に避けるべき「呪いの言葉」を知っておきましょう。「ちゃんとしなさい」「早くしなさい」「勉強しなさい」の3つの言葉は、子どもの自己肯定感を破壊する呪いの言葉とされています。
1. 「ちゃんとしなさい」
これは子どもにとって、まったく意味の伝わらない言葉です。「ちゃんと、って何?」「きちんと、ってどういうこと…?」と、抽象的であいまいな言葉のため、子どもは具体的な行動をしたり、イメージしたりすることができません。
2. 「早くしなさい」
時間に追われる現代社会では親がつい言ってしまいがちですが、この言葉も子どもには具体的な行動が伝わりません。
3. 「勉強しなさい」
命令形の言葉は子どもの自主性を奪い、やらされ感を生んでしまいます。
子どもの自己肯定感を爆上げする「魔法の言葉」10選
それでは、教育専門家が推奨する魔法の言葉をご紹介します。これらの言葉は軽く、明るく使うことで最大の効果を発揮します。
1. 「すごいね」
効果: 承認の基本となる言葉 使い方: 結果だけでなく、努力や過程を認める時に使います。「今日は宿題を自分から始められて、すごいね」
2. 「ありがとう」
効果: 感謝を伝えると、自己肯定感がアップします 使い方: どんな小さなことでも感謝を示しましょう。「お手伝いしてくれて、ありがとう」
3. 「大丈夫」
効果: 不安に寄り添い、気持ちを安定させる、魔法の言葉 使い方: 子どもが不安になった時に、軽くさらりと言います。「きっと大丈夫だよ」
4. 「なるほど」「知らなかった」
効果: 「なるほど」「知らなかった」は相づちの一種。子どもは、一人の人間として認められた気分に! 使い方: 子どもが何かを教えてくれた時に使います。「なるほど、そういうことだったんだね」
5. 「さすがだね」
効果: 子どもの能力や判断力を認める承認の言葉 使い方: 子どもが良い判断をした時に使います。「自分で考えて行動できて、さすがだね」
6. 「○○のおかげだよ」
効果: 子どもの存在価値を認める 使い方: 子どもの行動が家族に良い影響を与えた時に使います。「○○が手伝ってくれたおかげで、早く終わったよ」
7. 「どう思う?」
効果: 「一緒に」と子どもに寄り添い、「どうしたらいい?」と子どもにゆだねる 使い方: 子どもの意見を求め、考える機会を与えます。「今度の休日、どう過ごそうか?どう思う?」
8. 「がんばったね」
効果: プロセスを認める最強の言葉 使い方: 結果に関係なく、努力した事実を認めます。「最後まで諦めずに、がんばったね」
9. 「あなたらしいね」
効果: 子どもの個性を認める 使い方: 子どもの良い特徴が表れた時に使います。「困っている友達を助けるなんて、優しい○○らしいね」
10. 「あなたがいてくれて嬉しい」
効果: 存在そのものを肯定する最高の言葉 使い方: 特別な理由がなくても、愛情を伝える時に使います。「○○がいてくれて、本当に嬉しいよ」
シーン別活用法
朝の時間
❌ 「早く準備しなさい!」 ⭕ 「準備できたらすごいね」「ありがとう、助かるよ」
宿題の時間
❌ 「勉強しなさい!」 ⭕ 「どこから始める?」「がんばってるね」
失敗した時
❌ 「だから言ったでしょう」 ⭕ 「大丈夫、次はうまくいくよ」「挑戦したこと、すごいね」
成功した時
❌ 「○○君よりすごいね」(他者比較) ⭕ 「前よりも上達したね」「がんばった結果だね」
魔法の言葉を使う時のポイント
1. 目を見て話す
目を見て言葉かけをすると、子どもは自分への言葉であることを強く認識します。忙しい時でも、一度手を止めて子どもと向き合いましょう。
2. 具体的に褒める
「すごい」だけでなく、「○○ができてすごい」と具体的に伝えることで、子どもは何が良かったのかを理解できます。
3. タイミングを大切に
叱られた後や重要な話の後に褒められても子どもの耳には入りません。褒めることがあれば、なるべくすぐに伝えるようにしましょう。
4. 軽やかに伝える
重く深刻にならず、軽やか明るく伝えることで、子どもは素直に受け取れます。
5. 継続する
自己肯定感は短期間で大きく変化するものではなく、日々のコミュニケーションや経験で上がったり下がったりするものです。継続的な声かけが重要です。
年齢別アプローチ
幼児期(2-6歳)
- スキンシップと一緒に言葉をかける
- 単純で分かりやすい表現を使う
- 「ありがとう」「すごいね」を多用
小学生(6-12歳)
- 具体的な行動を褒める
- 「どう思う?」で意見を求める
- 失敗も成長として認める
中学生以上(12歳~)
- 人格を尊重した接し方
- 自主性を重んじる声かけ
- 信頼していることを伝える
親自身の自己肯定感も大切
まずは自分に魔法のことばをかけてみる、というのも効果があるとのこと。親の自己肯定感も非常に大切なのよね。親がイライラしている時は、子どもにも負の感情が伝わってしまいます。
親自身も「今日もがんばった」「私ってすごい」と自分を褒めることから始めてみましょう。
効果的な実践方法
1. 1日3回の魔法の言葉
まずは1日に3回、意識して魔法の言葉をかけることから始めましょう。
2. 魔法の言葉日記
どんな場面でどの言葉を使ったか、子どもの反応はどうだったかを記録すると、効果的な使い方が見えてきます。
3. 家族みんなで実践
パートナーや他の家族メンバーにも協力してもらい、家庭全体で肯定的な言葉環境を作りましょう。
よくある質問
Q: 褒めすぎると甘やかしになりませんか? A: 結果だけでなくプロセスを褒めることで、健全な自己肯定感が育ちます。「頑張ったからテストで100点取れた」ではなく「毎日コツコツ勉強を続けられたね」という風に。
Q: 思春期の子どもにも効果ありますか? A: はい。特に思春期は自己肯定感が不安定になりやすい時期なので、親からの肯定的な言葉は重要です。ただし、幼児期とは違った接し方が必要です。
Q: 効果はどのくらいで現れますか? A: 個人差がありますが、2週間程度継続すると、子どもの表情や行動に変化が見られることが多いです。
研究データで見る効果
文部科学省のデータによると、子どもは親に褒められることで「自分らしさ」を感じられるとしています。そして自分らしさを感じた結果、自己肯定感が高くなる傾向があることがわかっています。
また、同志社大学の「子どもの自己肯定感に及ぼす影響要因に関する実証研究」によると、「親・親戚との関係」「学校での生活」「友人の有無」のいずれもが自己肯定感に影響していると発表されています。
まとめ
子どもの自己肯定感を高める「魔法の言葉」は、特別なテクニックではありません。日常的な声かけを少し意識して変えるだけで、子どもの心に大きな変化をもたらすことができます。
今日から実践できる3つのステップ
- 「呪いの言葉」(ちゃんとしなさい、早くしなさい、勉強しなさい)を封印する
- 1日3回、魔法の言葉を意識して使う
- 子どもの目を見て、具体的に褒める
親の言葉が変わると、子どもの自己肯定感が上がります。親の言葉が変わると、子どもの将来も変わります。
ぜひ今日から、お子さんに魔法をかけてあげてください。その小さな変化が、お子さんの人生に大きな影響を与えることでしょう。きっと、親子ともに笑顔あふれる毎日が待っています。
参考文献
- 石田勝紀『子どもの自己肯定感を高める10の魔法のことば』
- 文部科学省「自己肯定感を高め、自らの手で未来を切り拓く子どもを育む教育の実現」
- 同志社大学「子どもの自己肯定感に及ぼす影響要因に関する実証研究」
- ベネッセ教育総合研究所 各種調査報告書
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