「進学したいけれど学費が心配…」そんな不安を抱える学生や保護者の皆さんにとって、奨学金制度は強い味方です。しかし、奨学金は「未来への投資」であると同時に「将来への責任」でもあります。
現在、大学生の約半数(55.0%)が奨学金を利用していますが、卒業後の返済に苦しむケースも少なくありません。本記事では、奨学金制度を賢く活用するために知っておくべきメリット・デメリットと、失敗しない借り方のコツを詳しく解説します。
まず知っておきたい奨学金制度の基本
奨学金の種類
【日本学生支援機構(JASSO)の奨学金】
- 給付型奨学金:返済不要(2020年から拡充)
- 第一種奨学金:無利子の貸与型
- 第二種奨学金:有利子の貸与型(金利上限3%)
【その他の奨学金】
- 大学独自の奨学金
- 地方自治体の奨学金
- 民間団体・企業の奨学金
- 新聞奨学生制度など
2025年度からの重要な制度変更
2025年度から、多子世帯(3人以上の子を扶養する世帯)については所得制限なく授業料等減免支援が拡大されます。これは教育費負担軽減の大きな前進です。
奨学金のメリット
1. 進学の夢を実現できる
経済的な理由で大学や高等学校への進学が難しい学生にとっては非常に重要な制度です。家庭の経済状況に関わらず、学習意欲がある学生が高等教育を受けられます。
2. 他のローンと比較して非常に低金利
有利子のものでも利息が非常に低く、昨年12月時点でも、固定方式が0.156%、見直し方式は0.004%という超低金利です。
金利比較例:
- 奨学金(第二種):0.156%(固定方式)
- 国の教育ローン:1.66%
- 銀行教育ローン:2-4%程度
3. 柔軟な返済制度
- 所得連動返還方式:前年の収入に応じて返済額が調整
- 減額返還制度:経済困窮時に月額を減額可能
- 返還期限猶予制度:失業・病気時の返済猶予
4. 社会的信用がある制度
金融機関や社会から認知された制度で、他の借入審査への影響も比較的軽微です。
奨学金のデメリットとリスク
1. 長期間にわたる返済負担
奨学金の返済期間は平均14.7年で、毎月の返済額の平均は1万6,880円です。卒業後の生活設計に大きく影響します。
返済の具体例:
- 借入総額300万円の場合:月約15,000円を20年間
- 借入総額500万円の場合:月約25,000円を20年間
2. 返済開始は卒業7ヶ月後
奨学金の返還は、貸与期間終了後の翌月から数えて7ヶ月目より開始されます。就職したばかりで収入が安定しない時期に返済が始まることに注意が必要です。
3. 延滞時のペナルティが重い
- 延滞金:返済期日翌日から発生
- 信用情報への登録:3ヶ月以上の延滞で個人信用情報機関に記録
- 法的措置:最悪の場合、財産差し押さえも
4. 将来のライフプランへの影響
結婚、住宅購入、起業など、人生の重要な選択肢に制約が生じる可能性があります。
賢い奨学金の使い方|5つの鉄則
鉄則1:給付型を最優先で検討する
まずは返済不要の給付型奨学金を徹底的に探しましょう。
チェックポイント:
- 高等教育の修学支援新制度(国の給付型)
- 大学独自の給付型奨学金
- 地方自治体の給付型奨学金
- 企業・財団の給付型奨学金
鉄則2:必要最小限の金額を借りる
奨学金の金額が多くなれば多くなるほど、今の高校生の皆さんが社会人になったとき、多額の返済で生活を圧迫してしまうおそれもあります
適正借入額の目安:
- 卒業後の初任給の1/3以下が月返済額の目安
- 総借入額は年収見込みの1.5倍以内に抑える
鉄則3:第一種(無利子)を優先する
同じ条件なら必ず無利子を選択しましょう。第一種奨学金は無利息なので、借りた金額をそのまま返済するだけです。
鉄則4:返済計画を事前にシミュレーション
借りる前に必ず返済シミュレーションを行いましょう。
シミュレーション項目:
- 毎月の返済額
- 返済期間
- 総返済額(利息含む)
- 卒業後の収支予想
鉄則5:家族でしっかり話し合う
奨学金は学生本人の借金です。家族全員で制度を理解し、返済計画を共有することが重要です。
返済が困難になった時の救済制度
万が一返済が困難になっても、諦めずに相談することが大切です。
1. 減額返還制度
災害・傷病・経済的事由によって奨学金の返済が困難である場合、月々の返済額を減額することが出来る制度
適用条件:
- 年収325万円以下(給与所得者)
- 年収225万円以下(給与以外の所得者)
- 適用期間:最大15年間
2. 返還期限猶予制度
災害、傷病、経済困難、失業などの理由により返還が困難な場合に、願い出により返還を猶予できます。
3. 企業の返済支援制度
2024年5月末時点で全国で2,023社の企業等に登録が拡大しており、6,868人に支援を行っています。就職活動時に確認してみましょう。
奨学金以外の選択肢も検討しよう
教育ローンとの比較
国の教育ローン:
- 金利:1.66%(2025年現在)
- 借入上限:子ども1人につき350万円
- 在学中は利息のみの返済も可能
メリット・デメリット比較:
奨学金教育ローン金利0.156%~1.66%~借主学生本人保護者入学金対応×○返済開始卒業後7ヶ月借入直後
その他の学費調達方法
- アルバイト収入:月5-8万円程度
- 特待生制度:成績優秀者への学費免除
- 企業奨学金:卒業後の就職を条件とした支援
- クラウドファンディング:新しい学費調達手段
借りる前のチェックリスト
奨学金申請前に以下の点を必ず確認しましょう:
【家計状況の確認】
- 家庭の年収と奨学金受給条件
- 兄弟姉妹の進学予定
- 保護者の退職時期
【進路・就職の検討】
- 志望する学部・学科の就職率
- 卒業後の平均年収
- 資格取得による収入見込み
【返済計画の策定】
- 借入予定総額
- 月返済額のシミュレーション
- 生活費を含めた収支計画
【制度理解の確認】
- 奨学金の種類と条件
- 返済方式の選択肢
- 救済制度の内容
まとめ:奨学金は「投資」として賢く活用しよう
奨学金は単なる「借金」ではなく、将来への「投資」です。しかし、その投資を成功させるためには:
✅ 借りる前にしっかり検討
- 給付型の徹底的な探索
- 必要最小限の借入
- 詳細な返済シミュレーション
✅ 在学中の意識的な行動
- 学業に真剣に取り組む
- 資格取得やスキル向上
- 就職活動の早期準備
✅ 返済時の計画的な対応
- 口座残高の確実な管理
- 困った時の早期相談
- 可能な場合の繰上返済
奨学金をきちんと返している人は97.4%います。適切な判断と計画的な利用により、奨学金は人生を豊かにする強力なツールとなります。
最後に:奨学金に関する疑問や不安がある場合は、学校の奨学金担当者やJASSO(日本学生支援機構)に積極的に相談しましょう。正しい情報と計画的な判断が、あなたの明るい未来への第一歩となります。
※本記事の情報は2025年度時点のものです。制度変更の可能性があるため、申請前に必ず最新情報をご確認ください。
参考資料:
- 日本学生支援機構(JASSO)
- 文部科学省「奨学金事業の充実」
- 労働者福祉中央協議会「奨学金や教育費負担に関するアンケート調査」
相談窓口:
- JASSO奨学金相談センター:0570-666-301
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