子育てをしていると、忙しさやストレスでつい口にしてしまう言葉があります。しかし、その何気ない「口癖」が、実は子どもの才能や可能性を大きく制限してしまっているかもしれません。
教育評論家や心理学者の研究によると、親の言葉は子どもにとって一種の暗示のようなもので、「あなたはできる」と言われて育った子は恐れずに挑戦する子になるなど、親の言葉が価値観の基礎になることが分かっています。
今回は、多くの親が無意識に使ってしまいがちな「子どもの才能を潰すNG口ぐせ」をワースト5として紹介し、代替となる言葉も合わせてお伝えします。
【ワースト1位】「何度言ったら分かるの!」
なぜNGなのか
この言葉を連発してしまうと、子どもは「どうせ自分は何度言われても分からない」「どうせ自分は出来ない」といったようなネガティブで否定的な考えになってしまいます。
子どもを否定するような言葉は、自己肯定感を著しく低下させ、「自分はダメな人間だ」という思い込みを植え付けてしまいます。
言い換え例
❌ NG: 「何度言ったら分かるの!」
⭕ OK:
- 「どうしたらできるようになるかな?」
- 「お母さんは○○したらよいと思うよ」
- 「一緒に考えてみよう」
【ワースト2位】「他の子はできてるのに…」
なぜNGなのか
兄弟・姉妹やお友達など、他人と比較して評価する行動は、子どもの自己肯定感を下げる大きな要因となります。
比較されることで、子どもは以下のような心理状態になります:
- 自分は劣っているという劣等感
- 親の愛情は条件付きだという不安
- 他の子への敵意や嫉妬心
例えば兄弟を比べることで、お互いが意識的または無意識的に「敵意」を持つようになり、家族関係にも悪影響を与えます。
言い換え例
❌ NG: 「○○ちゃんはできてるのに、どうしてあなたは…」
⭕ OK:
- 「前よりもずいぶん上手になったね」
- 「あなたらしいやり方を見つけてみよう」
- 「あなたの頑張りを見ているよ」
【ワースト3位】「早くしなさい!」
なぜNGなのか
幼い子どもは時間的な感覚が養われていないため、「どの程度が早くなのか」が分からないことが多く、親の「早くしなさい」がなかなか伝わりません。
また、「早くしなさい!」を連発していると、急かさなければ動けない子になってしまう可能性があります。自分で考えて行動する主体性が育たなくなってしまうのです。
言い換え例
❌ NG: 「早くしなさい!」
⭕ OK:
- 「あと5分で出発だよ」(具体的な時間を示す)
- 「次は靴を履こうか」(具体的な行動を示す)
- 「時計の針がここになったら出かけよう」
【ワースト4位】人格否定の言葉「ずるい子ね」「意地悪な子」
なぜNGなのか
これらは人格を丸ごと否定する言葉であり、絶対に子どもに言ってはいけません。
このように言われると、子どもは「親はぼくのことをずるい子だと思っているんだ。どうせぼくはずるいよ。親もこんなぼくのことが嫌いなんだ」と思うようになります。
人格否定の言葉の例:
- 「ずるい子ね」
- 「意地悪な子」
- 「だらしがない」
- 「うそつき」
- 「なさけない子」
言い換え例
❌ NG: 「また弟を泣かせて!なんてあなたは意地悪なの!」
⭕ OK:
- 「弟を泣かせちゃダメよ。どうしたら仲良くできるかな?」
- 「弟は泣いているよ。どんな気持ちかな?」
【ワースト5位】「あとでね!」(実行しない)
なぜNGなのか
忙しい時に子どもからあれこれ質問をされたり、要求をされたりすると、つい言ってしまう言葉が「あとでね!」です。
「あとでね!」と言った以上、あとからしっかりと子どもの欲求を満たしてあげていれば良いですが、忙しいからとりあえず先延ばしにするために使っている場合は危険です。
子どもは「自分は大切じゃないから、後回しなんだ」と勘違いしてしまいますし、あとのない「あとでね!」は、大人に対する不信感にもつながります。
言い換え例
❌ NG: 「あとでね!」(具体性がない)
⭕ OK:
- 「寝る時に聞かせてね」
- 「お風呂に入った時に話そう」
- 「夕飯の後でゆっくり聞くから待ってて」
NG言葉が子どもに与える深刻な7つの影響
教育専門家の研究によると、否定的な言葉で子どもを叱り続けることには、以下のような深刻な弊害があることが分かっています:
1. やる気の完全な消失
「やらなきゃ」という気持ちすら摘み取ってしまいます。
2. 親への愛情不足感
「親は自分を大切に思ってくれていない」と感じるようになります。
3. 自信の喪失
自分に対する自信を持てなくなります。
4. 悪い自己イメージの形成
「自分はダメな人間だ」という思い込みが固定化されます。
5. 物事の価値の低下
叱られた物事(勉強、片付けなど)の価値が子どもの中で下がってしまいます。
6. 嫌悪感の増大
叱られた物事がますます嫌いになってしまいます。
7. 否定的な言葉遣いの習得
親の否定的な言葉遣いそのものを身につけてしまいます。
子どもの才能を伸ばす効果的な声かけのポイント
1. 「私」を主語にする
❌ NG: 「(あなたは)何回言ったらわかるの!」
⭕ OK: 「(私は)○○してくれると嬉しいな」
子どもを責めるのではなく、親の気持ちを伝えることで、子どもは防御的にならずに話を聞けるようになります。
2. 行動を具体的に示す
❌ NG: 「ちゃんとしなさい」
⭕ OK: 「靴をそろえて置こうか」
「ちゃんと」では子どもには何をすればいいのか伝わりません。具体的な行動を示すことが大切です。
3. プロセスを認める
結果ではなく、努力や挑戦したこと自体を認めてあげましょう。
例:
- 「頑張ったね」
- 「挑戦したことがすごいよ」
- 「最後まであきらめなかったね」
4. 子どもの気持ちを受け入れる
❌ NG: 「泣かないの!」
⭕ OK: 「悲しかったね。お母さんに教えて」
まず子どもの感情を受け入れることで、信頼関係が築かれます。
まとめ:言葉の力を味方につけよう
親の何気ない言葉は、子どもの人生に大きな影響を与えます。特に幼少期に親から言われ続けた言葉は、子どもの価値観や自己イメージの基礎となります。
今日から意識したいポイント:
- NG言葉をやめる – 人格否定や比較の言葉を使わない
- 具体的に伝える – 抽象的な言葉ではなく、具体的な行動を示す
- プロセスを認める – 結果より努力や挑戦を評価する
- 感情を受け入れる – 子どもの気持ちをまず受け止める
- 約束を守る – 「あとで」と言ったら必ず実行する
完璧である必要はありません。大切なのは、子どもの可能性を信じ、その子らしさを大切にしながら、愛情を持って接することです。
言葉の力を味方につけて、子どもの才能が花開く環境を作っていきましょう。今日からでも遅くありません。まず一つの言葉から変えてみませんか?
参考文献・研究
- 教育評論家 親野智可等氏の研究
- 一般社団法人日本キッズコーチング協会 竹内エリカ理事長の研究
- 親業訓練協会の研究結果
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