楽しかった夏休みが終わり、いよいよ新学期。しかし、お子さんから「学校に行きたくない…」という言葉が出て、戸惑っている親御さんも多いのではないでしょうか。実は、夏休み明けの9月は「9月病」と呼ばれる心身の不調が起こりやすい時期なのです。
この記事では、子どもの心理状態を理解し、適切にサポートするための親子の会話術をご紹介します。
🌸 夏休み明けの「9月病」とは?
9月病の実態
9月病とは、夏休みが明けて仕事や学校が始まる9月の時期に、急激な温度変化も影響して心や体の調子を崩してしまい、仕事や学業にうまく復帰できないことを指します。
認知度はわずか16.5%でしたが、実際に不調を感じたことがある人は約4割にも上る結果となりました。特に若い世代の方が経験率が高く、20代では52.5%と、2人に1人は『9月病』の症状を感じたことがあるという調査結果もあります。
子どもに現れやすい症状
「やる気が出ない」と答えた方が63.3%で最も多い結果となりました。「気分の落ち込み」(48.1%)と回答した方も多いことから、メンタル面で『9月病』の症状を実感する方が多い傾向がうかがえます。
子どもの場合、以下のような症状が現れることがあります:
身体的症状
- 朝起きるのがつらい
- 「お腹が痛い」「頭が痛い」などの体調不良
- 食欲がない
- 夜眠れない、朝起きられない
- 疲れやすい、だるい
精神的症状
- やる気が出ない
- 気分が落ち込む
- イライラしやすい
- 不安感が強い
- 集中力がない
🎯 9月病になりやすい子どもの特徴
夏休み明けに学校へ行きたがらなくなる子の傾向としては以下の3つが挙げられる:①夏休み前から、学校に行きたがらない傾向があった ②睡眠不足が続くなど、夏休み中に不規則な生活を送っていた ③宿題をやっていないなど、うしろめたい気持ちがある
特に注意が必要なのは、いわゆる『心の段差のある子』と専門書などで表現されるタイプのことで、「嫌なことなどがあると引きずりやすく、誰かに言われたことなど、一つひとつの物事に傷つきやすい、つまり敏感で繊細な子ということ」です。
📢 子どものSOSサインを見逃さない
子どものストレスを発見するSOSサインチェックとして、以下の項目をチェックしてみましょう:
- □ 朝、なかなか起きない
- □ 朝、登校前に「おなかが痛い」「気持ちが悪い」「頭が痛い」などと不調を訴える
- □ 朝、学校に行く支度をするのにグズグズしている
- □ 学校から帰ってきたときの表情が楽しそうでない
- □ 夜寝る前にイライラしている、不満などを言う
- □ 夜、寝つきが悪い
- □ 食欲が落ちてきた
- □ 宿題をやろうとしているのに進まない
- □ 急に甘えてくることがある
- □ 急に泣き出すことが増えた
💬 効果的な親子の会話術
基本姿勢:まずは受け止める
保護者は、子どもがつらそうだなと感じたら、心配していることを伝え、「何か気になることはある?」などと見守っていることが伝わることばをかけていきましょう。このとき「そんなこといちいち気にしないで」と、子どもの不安を否定することを言わずに、「そうなんだね」と子どもの気持ちをそのまま受け止めて共感することが大切です。
✅ 効果的な声かけ例
1. 気持ちを受け止める
- 「そうなんだね、学校に行きたくない気持ちなんだね」
- 「つらい気持ちを教えてくれてありがとう」
- 「お話ししてくれて嬉しいよ」
2. 安心感を与える
- 「無理しなくていいよ」
- 「○○の味方だからね」
- 「一緒に考えよう」
3. 選択肢を提示する
- 「今日はどうしたい?」
- 「途中からでも行きたくなったら送っていくよ」
- 「少し休んでから考えてもいいよ」
4. 感謝を表現する 感謝を伝えることで子供の心はそれでグッと軽くなりますし、親子の信頼関係を増すことにもつながります。また、子供が自ら「学校に行きたくない」とSOSを出せる状態であることは、早めの対応ができるということでもあります
❌ 避けるべきNGな声かけ
子どもが言いたいことを言えなくなる「コミュニケーションを妨げる障害となる言い方」として、以下のような声かけは避けましょう:
1. 命令・指示
- 「イヤでも行きなさい」
- 「甘えてないで起きなさい」
2. 脅迫・注意
- 「みんなと遊べなくなっちゃってもいいの?」
- 「このままだと勉強が遅れるよ」
3. 説教・訓戒
- 「人生にはやりたくなくてもやらなきゃいけないことがある」
- 「学校は行くのが当たり前」
4. 他の子との比較 「◯◯ちゃんは行っているよ」と他の子と比べたりすると、こどもの自尊心をますます貶めてしまいます。親が安心するための言葉は、こどもに言わなくていいんです
5. 解決の押し付け
- 「早く寝れば大丈夫」
- 「先生に相談すれば?」
年齢別アプローチ
小学校低学年(1-3年生)
- シンプルで分かりやすい言葉を使う
- 抱きしめるなどのスキンシップを大切にする
- 「大丈夫だよ」という安心感を繰り返し伝える
小学校高学年(4-6年生)
- 子どもの意見を尊重し、一緒に考える姿勢を示す
- 具体的な解決策を一緒に探す
- 将来への不安があれば、選択肢の多さを伝える
中学生 「学校に行く/行かない」という選択肢をフラットに話し合い、本人の意志を尊重する。「失敗してもまたやり直せるよ」と、選択肢はひとつじゃないことを伝え続ける
🏠 家庭でできる対処法
生活リズムの調整
規則正しい生活を送る: 毎日同じ時間に寝て、同じ時間に起きるように心がけ、体内時計を整えましょう。特に朝、一定の時間に日光を浴びることは、体内時計のリセットに効果的です。
具体的な対策:
- 夏休み中に乱れた睡眠リズムを段階的に戻す
- 朝は一定の時間に起きて日光を浴びる
- 夜はスマホやゲームの時間を制限する
- バランスの良い食事を3食きちんと摂る
家庭環境の整備
親御さんは、家庭の居心地をよくして、十分に子供を休ませてあげてください。食事、睡眠、入浴をしっかり取らせ、子供がゲームなど好きなことをして過ごすのを温かく見守るようにしましょう
ポイント:
- 家庭を安心できる場所にする
- 子どもの好きなことを制限しすぎない
- 親自身がリラックスして過ごす
- 焦らずゆったりと見守る
⚠️ こんな時は専門機関への相談を
気分の落ち込みや眠れないなどの症状が日常生活に支障をきたしているような場合は、医療機関に相談してください。特にこれらの症状がいくつも2週間以上続いているような場合はうつ病を発症している可能性があります
相談先の例
- 学校のスクールカウンセラー
- 地域の子育て相談窓口
- 心療内科・精神科
- 24時間子どもSOSダイヤル(なやみいおう)0120-0-78310
🌱 親として大切な心構え
「晴好雨奇」の考え方
「晴好雨奇」という言葉があります。晴天でも雨天でも、それぞれに素晴らしい景色があるという意味があります。この言葉のように、お子さまが、元気に学校へ行っている時も、行きたがらない時も、それぞれに、よい《景色》があると考えてみてはいかがでしょうか
長期的な視点を持つ
連休明けに「ママ、学校に行きたくない」と子どもが言うのは「ママ、4月中に頑張りすぎてバッテリーがあがっちゃったから充電したい」のSOSサインなのです
子どもの「学校に行きたくない」は一時的な充電サインであることが多く、適切にサポートすれば自然と回復していきます。
親自身のケアも大切
2つ目は、親は親で生活を楽しむことです。お子さんにかかりきりにならない、とも言い換えることもできます。親御さんがお子さんにかかりきりになると、お子さんは「親に迷惑をかけている」「自分は信用されていない」などと思うことにつながり、逆効果になることがあります
📊 回復のプロセス
9月病の回復には個人差がありますが、一時的なものであれば、数週間程度で自然に改善することも珍しくありません。特に、原因が明確で、それに対して適切な対策を講じられた場合は、比較的早く回復する傾向があります
回復のステップ:
- 休息期:まずは心と体を十分に休ませる
- 安定期:生活リズムを少しずつ整える
- 準備期:学校への関心を徐々に取り戻す
- 再開期:段階的に学校生活に復帰する
✨ まとめ:信頼関係が何より大切
夏休み明けの「学校に行きたくない」という子どもの言葉は、親にとって心配なものですが、「行きたくない」と言葉にする子は正直な気持ちを話しており、親を信頼している証拠です。まずはこどもに共感し、味方になり、気持ちを受けとめてあげてください
大切なのは:
- 子どもの気持ちを否定せず、まず受け止める
- 焦らず、子どものペースに合わせる
- 家庭を安心できる場所にする
- 必要に応じて専門機関に相談する
- 親自身も無理をしすぎない
子どもたちには自分を回復させる力があります。親がしっかりと支えることで、きっと元気に学校生活を送れるようになるでしょう。一人で抱え込まず、周囲のサポートも活用しながら、親子で乗り越えていきましょう。
参考情報
- 24時間子どもSOSダイヤル:0120-0-78310
- 各地域の教育委員会相談窓口
- スクールカウンセラー
- 心療内科・精神科医療機関
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